2011年フレックスコース入学 鶴飼 太郎
2012年3月10日(土)と11日(日)の2日間にわたり南山学園研修センター(名古屋)にて、3大学(青学大、南山大、関学大)ビジネススクール合同研修会が行なわれました。中心テーマは、2000年以降イスラム圏において急速に発達してきた無利子を主体とするイスラム金融について、その歴史や魅力を理解し、西洋型の有利子金融の世界観との違いを肌で感じようというものです。私自身ABSで証券市場と金融市場について深く学びたいと考えていますが、ソーシャルビジネスなどの自主勉強会にも参加してグローバルな利益配分に重点を置く次世代のエコシステムについて色々と考えてきました。世界人口の1/4に達するイスラム圏で発達を続けるイスラム金融にどのような未来が待ち受け、我々の資本主義とどのような接点があるのか、強い興味のもと大きな期待を胸に参加しました。
1日目
- 「マレーシアにおける資本市場の発展」 市野 初芳教授(青山学院大学)
- 「Islamic Banking and Finance」 Associate Professor Engku Rabiah Adawiah Bintiengku Ali (International Islamic University Malaysia)
初めに実際にマレーシアで教鞭を取られている市野教授からマレーシアでイスラム金融が発達した歴史について分かりやすい紹介があり、イスラム金融についての背景知識を得ることができました。マレーシアはイスラム金融へのアクセスポイントとして重要な役割を果たしており、イスラム諸国(インドネシア、インドなどのアジア、サウジアラビア、エジプトなどの中東、ナイジェリアなどのアフリカ、さらに近年急速にその人口割合が増加する欧米諸国)へ新しい金融システムや商品を発信しています。
次に、マレーシアからお招きしたイスラム金融研究の第一人者であるDr. Engkuから、イスラム金融の仕組みや将来展望について詳しい解説がありました。イスラム金融ではサービスという形態で取引がなされ、信託金融(ムダーラバ)、マークアップ契約(ムラーバハ)、所有権移転を伴うリース金融(イジャーラ)など、貸付による利子(リバー)を排除した利益配分制度が金融システムの中心となっているようです。有価証券としてはイスラム債券(スクーク(国債))があり、リース・ボンド(スクーク・イジャーラ)としての性格を有しています。彼女はこの後直ぐエジプトでの講演に向け飛び立っていきました。
2日目
- 「グローバルな情報爆発と新時代のファイナンス」 岡田 克彦教授(関西学院大学)
- 「イスラム社会とファイナンス」 Professor KHONDAKER Mizanur Rahman, Nanzan University, Nagoya
2日目の朝はヘッジファンドの新しい局面について、関学大の岡田先生から最新の研究成果のお話がありました。岡田先生の研究室では行動ファイナンス理論に基づきショートポジションで利益を得るシステムの開発が行なわれています。行動ファイナンスでは投資行動のAnomalyに着目し、テキストマイニングを証券分析に組み込むことで震災などのEventにより生じるSentimentの動きを察知し、株価上昇前にその徴候をつかみます。イスラム金融では実体経済と遊離したデリバティブは言語道断、先物取引もクルアーン(胎内にいる子の価値を見越して母ラクダの売買をしてはならないという規定)などにより禁止されていますが、ヘッジファンドは年金などのリスク管理運用としてポートフォリオに組み込むことができるため、これらに制約をつけるイスラム金融への問題が指摘されています。
最後に南山大のProfessor KHONDAKERからバングラディッシュでのイスラム金融への取り組みが紹介されました。バングラディッシュでのイスラム金融もマレーシアと基本的には同じですが、グラミン銀行の小額融資(マイクロ・ファイナンス)活動が新しい社会経済活動として世界的な拡大をみせています。グラミン銀行は、①イスラム経済思想(平等、自由と博愛)を反映したイスラム金融の一種であり、②無担保で融資をするマイクロファイナンス、③借り手のほとんどが女性、④1995年から外部資金に依存せず融資活動を行い会員数は約600万人に達しています。教授とは講義の後にお話を伺う機会を得て色々と質問させていただき、今後もフォローしてより深く学びたいと思います。
東京、名古屋、大阪といった3大都市のビジネススクールから講師と学生が交流し、ABSだけでは普段交わさないトピックスやビジネスモデルについて新しい視点でディスカッションすることができました。西洋経済の中心たるシリコンバレーの成長を支えるベンチャーキャピタルなどのエコシステムは、投資家は「融資」ではなく「株式の購入」という形態で出資し、起業家には「元本保証」の義務が生じない点、担保ではなく人物と経験を評価することによって投資を決める点など、イスラム金融のムダーラバ契約と類似していると言われています。イスラム金融には根本原理の違いから生じる新しい経済活動の息吹を予感させ、イスラム金融市場への投資に限定せず、これら原理を組み込んだ新しいビジネスモデルについても積極的に考えていきたいと感じました。 |