2016.11.30

2016年度 第3回 青山フィロソフィー・フォーラム(APF)活動報告

高橋 文郎教授の主宰による「青山フィロソフィー・フォーラム(APF)」は第3回を迎え、前回の矢内原 忠雄「キリスト教入門」に引き続き、今回は松原 泰道の「般若心経入門」を取り上げ、わずか276文字に収められた人生の知恵を読み解き、仏教における「色即是空 空即是色」の思想について理解を深めました。

1)写経体験

般若心経の世界を更に体感するため、勉強会に先立ち、薬師寺東京別院にて写経を体験してきました。
普段筆を使って文字を書く機会が全くなく、「字が綺麗に書けない」「墨をつけすぎて文字が太すぎる」など煩悩がなかなか頭の中から離れなかったのですが、その中でも無心に筆を走らせている瞬間があり、書き終わると心が穏やかになりとても貴重な体験でした。

2)勉強会

日 時: 2016年10月15日(土) 17:00〜19:00
課 題: 松原 泰道「般若心経入門」(祥伝社黄金文庫)
参加者: 7名

般若心経において、「色即是空(しきそくぜくう)」は、形あるもの(色(しき))は必ず壊れるように、形あるものを空(くう)ずる(否定する)のです。
ところが、それで終わると虚無思想に過ぎず、この虚無感をもまた否定するのが「空即是色(くうそくぜしき)」です。
否定の否定は肯定ですが、否定前の色(しき)と、二重否定後の色では、同じ色でも、空(くう)を実感したか、しないかによって、その間に大きな違いがあります。
このままだと分かりにくいのですが、例えば、「家族を愛する」という場合、「単身赴任をして一人寂しさを感じ、家族の大切さに改めて気づき、家族を愛する」場合には、同じ「家族を愛する」でも大きく意味が違うと考えると、少し分かりやすくなりました。
また、煩悩(私たちの心身をかきみだす精神作用の総称)は、生きている限りなくなるものではなく、コントロールするものです。波立ちやすい感情の波をおさめる。しかし、おさめることにとらわれず、波立つ水は腐敗しないように、「さざなみ」のようなリズムのある波が好ましい波です。
このように考えると、少し煩悩に対する対処方法も変わってきそうです。

今回の勉強会を通じて、参加者から様々な解釈や考えを聞くことができましたが、やはり般若心経を数回読んだだけでは、実体験もなくなかなか腹落ちしないものでした。
しかし、薬師寺管長高田 好胤(たかだこういん)氏が般若心経の心を、「かたよらないこころ、こだわらないこころ、とらわれないこころ、ひろく、ひろく、もっとひろく——これが般若心経、空のこころなり」と説明したことばは、わかりやすく、仏教の教えが身近に生きているように感じることができました。

写経前に抹茶をいただきました