海外研修セミナー(2012年度)[専門科目(300番台)]

青山ビジネススクールでは、毎年海外の大学での講義受講や企業視察を行う海外研修セミナーを実施していますが、2012年度も8月26日~9月1日にかけてマレーシアへの研修セミナーが開催されました。海外研修セミナーに参加したMBA2年生の西嶋万博さんにセミナー参加の感想を寄稿していただきました。

2012年度海外研修(マレーシア)スケジュール
日 程 スケジュール
8月26日(日) 移動日
8月27日(月) 午前:Universiti Sains Islam Malaysia (USIM)にて講義
午後:USIMのMBA学生とのディスカッション
夕方:在マレーシア日本大使館を訪問
8月28日(火) 午前:Bank Muamalat Malaysia
イスラム金融について担当者より説明
午後:Zakat Center
イスラムの州税(Zakat)について担当者より説明
8月29日(水) 午前:Asia e University (AeU)にて講義
昼:HRDF(人的資源開発基金)にてディスカッション
午後:Petronas(国営石油会社)を訪問
8月30日(木) マラッカにて史跡見学
8月31日(金) マレーシア独立記念日パレード見学
9月1日(土) 移動日
複合民族国家で生活する人々と交流することで、多様な価値観に対する寛容性を高めることができました。 
2011年フレックスコース入学 西嶋 万博

私が今回の海外研修セミナーに参加した理由は、マレーシアの複合民族国家、イスラム社会を学ぶことで、日本企業がグローバル社会で生き残るためのヒントを得ることができるのではないかという思いと、座学だけではなく、実際、その土地を訪れることで、異文化理解を深め、多様な価値観を持つ人々への寛容性が高まるのではないかと思ったからです。実際にマレーシアの大学や企業などを訪問すると、これまでイスラム社会に縁遠い生活をしていた私は、その文化の魅力に引き込まれる毎日でした。

マレーシア政府は30年前に「ビジョン2020」を掲げ、一人当たりGDPを引き上げることで中進国から先進国入りを目指していました。この間、従来の労働集約型産業から資本集約型産業に移行し、最近では、環境ビジネス、イスラム金融といった知識集約型の産業に力を入れています。実際にマレーシアを訪問して、近代的な高層ビル群、巨大ショッピングモール、整備された高速道路など、当初の予想をはるかに超え、中進国ではなく、先進国と見間違うほどでした。特に、街の中心部に煌々とそびえたつペトロナス・ツインタワーは、マレーシア人の誇りと将来への希望を象徴しているかのようでした。

今回の研修では、USIM、AeUといった大学、Bank Muamalat Malaysia、日本大使館などでの講義、ディスカッションを通し、イスラム金融について学ぶ機会が多くありました。イスラム金融は、聖典コーランとシャリア法に基づき、利子の受取り、豚肉、酒類、武器、ポルノや賭博などへの投資が禁じられており、一般の金融とは異なる特徴を持っています。また、イスラム金融サービスを提供する金融機関には、シャリア諮問委員会が設置されており、投資の判断(シャリア適格か、不適格か)をおこなっています。このように金利の概念がなく、融資先に制限があるイスラム金融は、私たちが理解している一般の金融(コンベンショナル金融)とはかなり乖離したシステムです。しかし、実際に話しを聞いてみると、イスラム金融は、マレーシア社会において、コンベンショナル金融と同様に重要な金融システムである、と思いました。それは、イスラム金融が、ムスリム(イスラム教徒)以外の中国系・インド系マレーシア人および外国の投資家などにも幅広く利用されている状況を理解することができたからです。現在、イスラム金融は年率10%~15%で市場拡大しており、今後、日本企業の資金調達先としても一考の余地があると思いました。また、Zakat Centerでは困窮者を助けるための州税(ザカート)について、人的資源開発基金(HRDF)ではマレーシアの職業訓練についても学びました。さらに、ペトロナス・ツインタワーでは、国営石油会社ペトロナスを訪問し、その建物もさることながら、国営企業としての政府との一体感と、営利企業としての躍進ぶりを見ることができました。

マレーシアはこれまでルックイースト政策により、日本人の労働倫理観を手本としてきた背景があります。しかし、現在では逆に、日本がマレーシアから学ぶべきところがたくさんあると感じました。特に当たり前のように人々が2カ国語以上話している姿には驚かされました。また、複合民族国家であることから、幼少のころから異文化を理解し、柔軟な対応ができるスキルを身に着けているところもマレーシア人の強みであり、単一民族国家で過ごしている私たちが学ぶべき点であると感じました。近い将来、イスラム教徒が世界の4分の1を占めるといわれており、イスラム社会を理解し、その市場でビジネスを展開して行くことは避けて通れなくなると想像します。また、ASEAN市場を開拓する為にもマレーシアを戦略的な拠点として捉えることは重要であり、日本の仲間として、これまで築き上げてきたマレーシアとの友好的な関係を維持し、これまで以上に文化交流を図ることは非常に意味のあることだと思いました。

最後に、今回の海外研修セミナーは、先生方および関係者の皆様のご尽力もあり、非常にスムーズで密度の濃いスケジュールの中で多くの人々と交流することができました。特に、複合民族国家で生活している人々の多様な価値観を理解することで、その寛容性を高めることがグローバルな視点をもつ人間になるうえで必要不可欠であるということを再確認できました。今回、私は2年次に参加させていただきましたが、1年半、ABSで学んだ知見をフル活用し体験的な学習をすることで、さらに見聞を広める良い機会になったと思います。もちろん、1年次から参加し、異文化理解を深めることも今後のABS生活に大いに役立つものだと思います。海外研修セミナーに参加することは、通常の渡航ではなかなかできない体験を可能にします。まさにABSに在籍している今しかできないことであり、多くの方々に推奨したいプログラムです。