ABSでの学びがC CHANNELに

森川 亮さんC Channel株式会社 代表取締役社長

1999年修了

1989年に筑波大学を卒業し、日本テレビに入社。システム部門配属後、新規事業プロジェクトを中心に幅広いメディア事業に携わる。勤務しながらABSで学び、1999年に修了。ソニーを経て、2003年にハンゲームジャパン(現LINE)に入社し、事業部長、取締役、副社長を経て、2007年に代表取締役社長に就任。2015年から現職。

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なぜABSで学ぼうと思われたのですか?

もともとコンピューター工学を勉強してテレビ局でエンジニアとしてやっていたのですが、企画をする方が向いているなあと思い、キャリアチェンジを考えたのです。テレビ局を辞めずに働きながら勉強するには、海外ではなくABSが一番良かったわけです。

ABSで学ばれたことで、今活きていることはありますか

当時、「放送のグローバル化」というテーマで勉強していました。それをC CHANNELで今やっています。ずっとやらなきゃと考えていたのですが、それが今かなと思っています。結局コンテンツについては、「グローバルにうけるものをどうやって作るか」ということにつきます。当時学んだことは時代が変わった今でも活かせますね。今はグローバルなものが作りやすい時代だしLINEでも経験してきました。映像の世界は「お金がかかる」というイメージがありますが、今はコストも下げられるし、世界中の人が参加したものが作りやすい。そういうスキームを作れればいいわけです。

当時、そのテーマを取り上げた時はどういう思いがあったのですか

全てのビジネスがグローバル化していく中で、日本のメディアは守られていました。しかし、世界中のメディアはM&Aでグローバル化していたので、日本にもいずれそういう時代が来ると思っていました。自分たちから出ていく必要があると思い、上司にも報告していました。でも、日本人が日本人のために作っていたのでは、グローバル化はできないという問題意識があったわけです。

ABS時代の出来事で、記憶に残っていることはありますか

経営戦略論のケース討議で意見をぶつけ合うのが楽しかったですね。石倉先生※1やソニーの経営企画部に勤務していて非常勤講師として来ていた田中先生にはお世話になりました。田中先生の影響もあってソニーに転職しました。ソニーが持つ、課題や市場環境に対して積極的に攻撃に回るというビジョンや戦略が、自分の目指すところに合っていたからです。

その他には、ファイナンスの議論がとても新鮮で、その後も役に立っていますね。

※1石倉洋子(元青山学院大学国際政治経済学部教授)

ABSを修了してソニーに移られた経緯は

テレビ局で海外展開事業をやっていたが、やはりメインは地上波で重要視されていませんでした。当時、ソニーはメディアビジネスを強化して、次の通信事業に参入しようとしており自分に合っていると思いました。その後、ソニーは端末重視になってしまいましたが、自分はゲーム向けの事業をやり上手くいきました。

日本は、次に来るものが分かっていてもリスクを考え行動が遅い。だから日本はやりやすいという面もありますね。

LINEでの経営者としての経験はどのようなものでしたか

盛和塾※2に入って日本的な経営をやろうとしましたが、外国人はそういったものが嫌いでしたね。そこから、自分なりのやり方を模索しました。MBAと盛和塾、そしてIT企業やAppleのやり方をミックスして自分なりのやり方を考えました。

特にIT企業は変化とスピードが速いので、それに合うような仕組みに変えないと生き残れません。長期計画はたてません。1~3か月位で回し、戦略も柔軟に変え、変化の芽を常に気にします。そして、フィードバックを見ます。

インターネットには色々なパラメーターがあるので、常にスマホで見ています。組織としては、上下関係を作りません。サッカー型で、ヒエラルキーを無くし、パス回しをします。それができるメンバーを集め、皆で一つのゴールに向かって進みます。基本は指示を待たない、聞かない人ですね。自分で動き、結果が出ればそれでいいわけです。

経営者として重要なのは、優先順位を決めることですね。個人でバラバラにやっていると分散してしまう可能性があるので、まとめなければなりません。自分も日々変わるので、それを皆で共有します。

競争環境も常に変わります。動きが速いのでフォーマット化しにくく、これをやれば良い、というものがありません。生活必需品ではないので、いかに飽きられずに楽しんでもらうかを常に考えています。

※2京セラの創業者稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶための自主勉強会に端を発した経営者の集まり。

C Channelで若い女性にターゲットを絞ったのはなぜですか

若い女性は柔軟ですからね。感覚的に反応するので、新しいものを受け入れやすいわけです。若い女性向けには色々なビジネスを展開しやすいのです。

過去のビジネス経験でC Channelでも活きていることはありますか

LINEで学んだのは、速くやることです。そして、誰もやらないようなことをやることですね。儲かりそうもないことをやること重要です。競争がなく、息が長い。

情報の質も大切ですね。限定することで希少性が出ます。情報が広がり過ぎないよう絞り込むことも大事です。

スポンサーはナショナルスポンサーが多いです。若い人がテレビを見ないので、若い人向けにテレビと組み合わせて活用してもらっています。スポンサーも数を限定して、一緒にメディアを作るようなアプローチをしています。

売上は急成長しなくていいですね。サービスが急成長するのが大切です。過去の例を見ても、売上が急成長すると急に下がる。急成長しないなんて、上場企業ではないからできることですね。

競争が厳しいビジネスが一番難しいと思います。新しいものを常に生み出さないといけなくなってしまう。なるべく一つのもので長くもつものを生み出さないといけない。競争がないものがいいですね。すそ野は広い方がいいですが、儲かるかどうか分からない方がいい。あそこはもうダメだと言われた方がチャンスなのです。